ANEST IWATA Racing with Arnageは、8月5日(土)~6日(日)、静岡県富士スピードウェイで開催された2023 SUPER GT第4戦GT300クラスにANEST IWATA Racing RC F GT3で参戦しました。今回は前回に引き続き、SUPER GTシリーズの決勝標準距離300kmを1.5倍に延長した走行距離450kmのレースとして開催されました。
450kmレースでは選手にかかる肉体的な負荷を考慮し3人目の選手の登録も許されるので、ANEST IWATA Racingは前回同様、Cドライバーとして小山美姫(25歳)を起用し、レースの展開次第ではAドライバーのイゴール・フラガ、Bドライバーの古谷悠河に加え小山を投入する戦略を用意しました。
チームが使用するANEST IWATA Racing RC F GT3は、車両特性上、必ずしも高速コースの富士スピードウェイに適しているとは言えませんが、チームは前回のレース後、2か月のインターバルを利用して実戦用シミュレーターを用いた車両特性の分析に踏みきり、レースウィークへの持ち込みセッティングを絞り込んでマシンを仕上げ、富士スピードウェイへ持ち込みました。
公式予選
7月の記録的猛暑は8月に入っても続き、5日土曜日の富士スピードウェイは晴天となって気
温、路面温度とも上昇しました。午前中のフリー走行ではまずイゴールがステアリングを握って走り始めました。
猛暑の中、快調に走り始めたイゴールは6周してピットへ戻りセッティングに微調整を加えると再び走り出し、全体の4番手にあたる好タイムを記録して古谷に交代しました。古谷も快調に足慣らしを行いながらセッティングを微調整すると、セッション終盤には小山に交代、決勝レースでの走行に備えました。フリー走行でのタイムは全体の7番手でした。
午後の公式予選Q1では14台が出走するQ1A組と13台が出走するQ1B組がそれぞれ10分間のタイムアタックを行い、上位8台ずつが公式予選Q2に進んでスターティンググリッド上位16枠を決める規則になっています。チームはQ1A組に古谷を送り出しました。古谷はコースイン後3周にわたってタイヤのウォームアップを行うとタイムアタックにかかり、1周目に1分37秒869、2周目に1分37秒596を記録してQ1A組3番手となり、Q2進出を決めました。
16台で争われるQ2セッションはイゴールが担当しました。イゴールも3周をウォームアップに用い、タイムアタックに入りましたが、コース中盤でのタイムが伸び悩み、ラップタイムは1分37秒070に終わりました。次の周もタイムアタックを続けましたがタイム更新はならず、ANEST IWATA Racing RC F GT3のスターティンググリッドは8番手と決まりました。
決勝レース
前日まで記録的な猛暑が続いていた富士スピードウェイですが、決勝レースが行われる6日日曜日は一転して天候が悪化すると予報されていました。その予報通り、決勝スタート直前に雲が広がって雨が降り出し、出走全車はレインタイヤを装着しセーフティーカー先導でレースを始めることとなりました。チームは、スタートをイゴールが担当し、2番手を古谷選手が引き継ぐ作戦を選びましたが、今回は3番目の選手として小山選手を実戦に投入し、日本人女性選手として初めてSUPER GTの実戦出走を記録する予定もあったので、変則的な作戦を採る必要がありました。
イゴールはレインタイヤでスタートし、水しぶきが上がる中でタイヤが機能するのを待つ間、わずかにポジションを落としましたが規定で定められた2回の給油ピットストップ義務を満たすため10周を走った段階で最初のピットインを行い、雨が止んで乾き始めた路面を考慮しドライタイヤへ交換してレースへ復帰しました。
ここではドライバー交代ができない規則なのでイゴールはそのままレースを続け、ピットストップのロスタイムの分、順位を19番手にまで落としたものの、その後は先頭集団に遜色ないラップタイムで走行してオーバーテイクを続け、32周目には選手権ポイント目前の11番手へ復帰しました。
ところがこのオーバーテイクとほぼ同じタイミングでアクシデントが発生してセーフティーカーが介入し追い越し禁止となりました。イゴールは微妙なタイミングで追い越し違反の裁定を受け、ドライブスルーのペナルティーを課せられてしまいました。
ちょうど古谷選手へのドライバー交代のタイミングでもあり、ドライブスルーペナルティーとドライバー交代及び給油作業のロスタイムが重なり、イゴールからマシンを引き継いだ古谷選手は24番手にまで順位を落としてレースをやり直すことになりました。そこから古谷選手は追い上げを開始し徐々に順位を上げていきましたが、追い上げ中に後続車両に追突されてマシ
ンを小破するなどのアクシデントが発生、さらにコース上で火災も発生したためレースは赤旗で一旦中断されました。
この中断中に再び強い雨が降り出したため、グリッド上でタイヤ交換が許され、古谷選手もレインタイヤを装着してレース再開に備えました。レース再開後は、チームとして無理な追い上げはせず残りの周回数を使って小山選手をコースに送り出す作戦に転じ、20番手を走行していた67周目に古谷選手をピットへ呼び戻し、マシンを小山選手に引き継ぎました。小山選手はレインタイヤで走行を開始、当初は順位をじりじりと上げましたが、路面が乾いてきた影響でタイヤのグリップが低下し、周回を続けるのが精一杯という状況に陥りました。
乾いた路面に対応するためドライタイヤへ交換するチームも続出する中、チームはそのままレースを走りきる決断を下して小山選手に指示、小山選手もその指示通り苦しいながらも走行を続け、1周遅れの19位で92周を走りきりチェッカーフラッグを受けてレースを終えました。
レースを完走した結果、チーム部門では4戦連続で完走ポイントを獲得、チームランキングは21番手から20番手に上昇しました。次回シリーズ第5戦は、8月26日(土)~27日(日)、三重県鈴鹿サーキットで開催される予定です。
コメント
Aドライバー:イゴール・オオムラ・フラガ
「今回はセッティングが前回の富士より良い感じにまとまって、悩みだったリヤタイヤの消耗も抑えられるようになりました。Q2は5番手以内に行けるかなと思ったんですが、タイムアタックの1周をうまくまとめきれませんでした。レース中のペナルティーは僕のミスです。前のクルマをオーバーテイクしようとして、こちらのペースの方が速くてストレートでは少し前に出たとは思うんですが、相手もエンジンがよく伸びて並び返されたタイミングでセーフティーカーが介入するという微妙なタイミングでペナルティーを取られてしまいました。今後はこうしたミスがないようにします。レースでは期待したような結果は出せませんでしたが、クルマのパフォーマンスはレース毎に上がってきて、あまり得意ではない富士でも良いパフォーマンスを見せることができたので今後に向けてポジティブな週末だったと思います」
Bドライバー:古谷悠河
「予選はQ1を担当して、計測3周目、4周目でアタックしようと考えていて、狙い通りに行けました。A組3番で通過できて自分としては満足です。基本バッチリ合わせて噛み合った予選でした。イゴールもQ2で良かったし、前回の富士でのレースに比べると、クルマのパフォーマンスがかなり上がっている感じがしました。決勝に関しては、イゴールは悪くないレースをしていたんだけど、ペナルティーのドライブスルーがあったり、僕は追突されちゃったりとか予想しなかったことが起きて色々噛み合わなくて、結果だけを見ると散々なレースになりましたが、ドライコンディションのペースはかなりレベルが高かったし、得るところもたくさんあって次に繋がるポジティブなレースだったかなと思います」
Cドライバー:小山美姫
「デビューするまでたくさんの人の協力があったことを感謝しています。今日はチームの流れも良くない中、まずは完走することを第一に、自分ができることを最大限やってチェッカーを受けたいと思っていました。結局は譲ることもありましたが、割と良いペースで走れていたし自力オーバーテイクもできたし、雨の中サイドバイサイドで走ったり、自分にとっては良い経験ができました。ただ、良いペースで走れているなと思っていたら路面がドライになってきて難しいコンディションになっていきました。チームとしては順位を守るためにはステイした方がいいだろうと判断して、私もそう思ってレインタイヤのまま走り続けましたが、ドライバーとしてはもっと攻めたかったし、応援してくれている人たちにも元気な姿を見せたかったので、悔しかったしつらかったです。でもチームとしては、私が交代したときよりはポジションが6つ位上がっているので、クルマを壊さずゴールできたのは良かったと思っています」
武田克己総監督
「決して得意ではない富士スピードウェイでQ1を3番、Q2を8番手で通ったので、良いレースができるかなと思っていましたが、残念ながら決勝レースは雨になったり晴れたりと天候が混乱して、タイヤチョイスが難しいレースになってしまいました。ドライバーは3人とも、一所懸命走ってくれましたし、メカニックもそれをしっかり支えてくれました。ただペナルティーがあったり追突されたりと予期せぬ展開もあって、結局19位フィニッシュとなりましたが、完走でレースを終えることができました。小山選手は、日本人女性選手として初めてSUPER GTの決勝レースに出走し、責任周回数を走りきり大きな結果を残してくれました。ANEST IWATAは、会社として女性活躍を強く推進しておりますので、今回の結果をうれしく思います。小山選手もアスリートですから満足いかないところもあったと思いますが、その気持ちを次に繋げていくでしょう。もちろんチームとしても今回のレース結果を次に繋げていきます」